消化器内科でわかる
代表的な疾患について
炎症性腸疾患
下痢や腹痛、下血、発熱などの症状が慢性的に持続する疾患のことを炎症性疾患と言います。
抗生物質や整腸剤を内服しても治らず、繰り返すのが特徴です。
このような症状の多くは、細菌やウイルスへの感染性腸炎や自律神経のバランスが崩れることによって起こる過敏性腸症候群ですが、腸管免疫機能が異常に作動して慢性的に腸炎を起こしてしまうのが炎症性腸疾患です。
若年層に多く見られ、生活水準が高いほどかかりやすいと言われています。
炎症性腸疾患の発症原因は解明されていませんが、感染するような病気ではなく、遺伝子の関与などの先天的要因と生活習慣などの後天的要因が組み合わさって発症するのではないかと考えられています。
世界中で研究が進んではいますが、病気を根治させる薬は見つかっておらず、症状をできるだけ抑えて生活していくことが治療の目的となります。
炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病の2疾患に分類できます。
大腸粘膜に炎症が起こり、進行して潰瘍を形成する疾患です。
炎症範囲により、「直腸炎型」「左側大腸炎型」「全大腸炎型」に分類します。
慢性的であることが特徴で、10年以上の経過例では大腸がんの発生率が通常より高くなるため定期的に大腸内視鏡検査が必要です。
症状
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軽症…下痢、粘血便、しぶり腹(頻繁に腹痛があり便意を催すが、ほとんど便がでない)など
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重症…慢性的な強い腹痛、血性下痢、発熱、体重減少、貧血など
診断方法
慢性的な強い腹痛、血性下痢、発熱、体重減少、貧血など
治療法
原則的に内科的治療になります。ただし、重症である場合などは手術が必要となります。
原因が解明されておらず、若年層に多い病気です。消化管に縦長、または不整型の深い潰瘍を形成し、粘膜の炎症、腸管内腔が
狭くなる慢性の炎症性病変です。消化管のあらゆる部位に発生しますが、小腸や大腸が好発部位です。
症状
症状は非常に多彩で、侵された病変部位によっても異なります。腹痛や下痢、血便、体重減少、発熱、肛門病変など
診断方法
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血性下痢を引き起こす感染症を検査し、鑑別診断を行う。
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X線や内視鏡による大腸検査
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生検により病理検査
治療法
原則的に内科的治療になります。ただし、重症である場合などは手術が必要となります。
感染性胃腸炎
細菌(病原性大腸菌・サルモネラ菌・赤痢菌・チフス菌・腸炎ビブリオ菌など)、ウイルス(ロタウイルス・ノロウイルスなど)、寄生虫(アメーバ赤痢原虫など)の微生物を原因とする胃腸炎の総称を感染性胃腸炎と言います。
1年を通して発症しますが、細菌によるものは夏場に、ウイルスによるものは冬季から春先を中心に流行し、集団生活の場で大規模な流行となることもあります。
全ての年齢層で発症が認められていますが、患者の75%が10歳未満の小児とされています。
腹痛・下痢、嘔吐、発熱を主症状とし、結果、様々な程度の脱水、電解質喪失症状、全身症状が加わります。
感染後にだるい元気が出ないといった不定愁訴があることがありますが、一般的な初期症状は感染後4~9日後に現れる臍から下腹部にかけての激しい腹痛と下痢で、血便になることもあります。また、重篤になると、溶血性尿毒症症候群(HUS)や血栓性血小板減少性紫斑病による腎不全や脳障害が起こることもあります。
毎年気温が高くなる初夏から晩秋にかけて多発し、保育園や老人施設などの施設で集団発生が起こるなど、衛生管理の不備により感染拡大が起きやすくなりますので、注意しましょう。
潰潜伏期は、2週間前後です。その後39~40℃以上の発熱、下痢、バラ疹、脾腫、徐脈、腸出血がみられます。
病原体はヒトが保有し、患者、感染者の便・尿に汚染された食べ物、水を介しての経口感染ですが、接触感染もあります。
未治療の場合は、症状が軽快しても排菌が続きます。
感染性胃腸炎とは、嘔吐・吐き気・下痢・腹痛などの胃腸症状を主とする感染症です。
熱も伴うこともあります。そういった嘔吐や下痢を引き起こす感染症の原因はいろいろありますが、大きく分けて、ウイルス性のものと細菌性のものとに分かれます。
細菌性胃腸炎は、O-157やサルモネラ、腸炎ビブリオなどの細菌が原因になり、特に夏場に、食中毒など引き起こします。ウイルス性胃腸炎は、ロタウイルス腸炎に代表されるように冬場に嘔吐や下痢の症状を引き起こしやすいものです
ロタウイルス
乳児下痢症、嘔吐下痢症の原因で、感染経路は全て経口です。潜伏期は1~3日で下痢症状は3~9日継続します。
冬季に流行し、白色の水様下痢が特徴です。下痢が激しいため、脱水に陥りやすくなります。
ノロウイルス
ヒトからヒトへの感染と、ノロウイルスに汚染された食物(カキ・サラダが多い)や飲料水から感染し、学童・成人・老人施設で集団発生することが多いです。
潜伏期は2~3日で、脱水に注意していれば大抵3~4日の経過で改善します。
症状
対処療法となります。
ただし、乳幼児では発熱などの全身症状と肺血症を併発していることもあるので、抗生剤が投与される場合もあります。
下痢止め薬は、細菌が増殖し、症状が悪化することがあるのでなるべく使用しません。
細菌の種類によっては、症状がよくなってからも菌が便中から検出されることが多いので、定期的な便培養によって除
菌を確認することが必要です。
診断方法
腸内細菌検査・寄生虫卵検査など。問診により、可能性を考慮してからの検査となります。
治療法
検査により寄生虫の種類が特定できたら、寄生虫自体を体内から排除する治療と、症状を抑える治療を行います。
予防法
もっとも有効なのは手洗いです。調理に関しては、中心部まで85度の温度で1分以上の加熱が必要です。
カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの細菌に、経口感染して起こります。別名細菌性食中毒と言います。いずれも、食物が十分に調理されなかったり、料理人の手洗いがきちんとなされていなかった際に感染します。
症状
腹痛、発熱、血便。強い腹痛が特徴。腹部の膨満があることもあります。感染した大腸菌の種類により、便には違いがあります。嘔吐は、ウイルス感染によるものより比較的遅れて出現します。
診断方法
同じものを食べたもの同士で症状が確認できれば、可能性が高くなります。便検査、便培養検査を行い、出血の有無と原因細菌の特定を行う。
治療法
対処療法となります。
ただし、乳幼児では発熱などの全身症状と肺血症を併発していることもあるので、抗生剤が投与される場合もあります。
下痢止め薬は、細菌が増殖し、症状が悪化することがあるのでなるべく使用しません。
細菌の種類によっては、症状がよくなってからも菌が便中から検出されることが多いので、定期的な便培養によって除
菌を確認することが必要です。
予防法
もっとも有効なのは手洗いです。調理に関しては、中心部まで85度の温度で1分以上の加熱が必要です。
クリプトスポリジウム・アメーバ・ランブル鞭毛虫などの寄生虫が感染患者の糞口、汚染された水・食品を介して感染する。
多種多様な食品を口にし、多種多様な国外への旅行などの機会が増えている現状では、自らの行動を想定して、予防することが重要となります。
症状
寄生虫の種類により様々な症状があります。潜伏期間なども短いものから長いものとそれぞれ異なります。種類によっては、下痢や便秘などの症状が少なく、認知するのに時間がかかる場合があります。
診断方法
腸内細菌検査・寄生虫卵検査など。問診により、可能性を考慮してからの検査となります。
治療法
検査により寄生虫の種類が特定できたら、寄生虫自体を体内から排除する治療と、症状を抑える治療を行います。
過敏性腸炎症候群
過敏性腸炎症候群とは、ストレスからくる下痢・腹痛・便秘のことです!
過敏性胃腸炎とは、胃腸そのものには異常はないのに正常に機能しない機能的疾患で、精神的ストレスや不安などにより突発的な下痢、便秘の症状が突発的に起こります。
通勤や通学、出張などで精神的ストレスが加わると、自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達されて腸管の運動異常が誘発されます。また、ストレスによって急に腹痛が起こったという経験により、また起こるのではないかと不安になり、その不安が腹痛を増強させるという悪循環を引き起こします。
この疾患は、消化器科を受診する患者さんの半数近くを占めるのではないかと考えられているほど多く見られます。
炎症性腸疾患は、下痢型・便秘型・下痢便秘交代型に分類できます。
症状
下痢型
慢性的な下痢が続きますが、体重減少や血便は見られません。腸が活発に活動しているため、内容に関係なく、食事ごとに下痢が起こります。
便秘型
腹痛はあるものの便は出にくい。便意はあるのに十分な排便ができず、残便感や不快感が残ります。
下痢便秘交換型
下痢と便秘が数日おきに交互に発生します。自律神経失調症の症状や精神症状を伴うこともあります。
その他
ガス症状、腹部の膨満感、お腹がごろごろなるなど
診断方法
問診後、消化器系の検査(便検査・血液検査・腹部X線撮影・大腸内視鏡検査)を受けて機能性の疾患でないことを確認します。
その後、人間関係などのストレスが存在するか、ストレスが症状に関係しているかどうかを分析します。
治療法
分析に基づき、生活習慣の改善や食事療法を用います。
場合によっては消化管機能調節薬、便秘改善薬が処方されることもあります。
☆食事療法☆
下痢型:
冷たいもの・香辛料・油分の多いもの・発酵食品や、消化に悪い食べ物を避ける。
便秘型:
アルコール・香辛料・炭酸飲料・脂肪分の多い食品を避ける。食物繊維・ビタミンB・ビタミンCを摂る。
下痢便秘交換型:
その時々の症状に合わせた注意点に留意する。
対処法
!医師にご相談ください
最近は過敏性腸症候群という言葉がよく聞かれるようになり、この病気に対する一般の認識も高くなってきています。それにともなって「自分も過敏性腸症候群かもしれない」と受診される方が増えています。
腸の機能に異常はないのですが、慢性的でなおりにくいため、毎日の暮らしに大きな影響をおよぼします。ストレスが原因と分かっていても、それを取り除くのは簡単ではありません。
なかなかよくならない場合は最寄りの医療機関に相談してください。